デジタル&アナログの驚くべき技術を取材して参りました。
▼お仕事の内容をお聞かせ下さい
屋外の広告看板や造形物の企画・製作を主な仕事内容としています。それに最近では、レリーフの注文などもいただくようになりましたから、そちらの製作にも力を入れるようになりました。
当社では、お客さんからのご注文をオーダーメイドで製作しています。細部に至るまでを一つ一つ丁寧に創り込んでいきますから、手間隙を惜しむことなく、そしてしっかり仕上げることを当社の商品づくりのコンセプトにしています。
ご注文をいただくお客さんは、北は北海道から南は沖縄まで全国にまたがっています。全体のうち3割くらいは、本土からのご注文になりますね。
会社は、私の父が45年前に立ち上げ、当初は看板づくりがメインでした。
その後、造形物のほうも徐々に手がけるようになり25年くらいが経ちました。父は引退したので、私は2代目になります。
▼このお仕事の面白いところを教えて下さい
一番印象に残っている仕事でお話しすると、博物館さんから「『アフリカマイマイ』のレプリカを本物と瓜二つに作ってほしい!」と依頼されたことがあります。
博物館さんとしては、沖縄にはアフリカマイマイがいるということを広く知らせるために展示したいそうなのです。しかし生き物だから世話をしてあげないと生き続けられません。でも世話は出来ないからレプリカがほしいということなのです。それを引き受けた時、「大きさは17センチで・・・。」と寸法まで決められていました。17センチというのはアフリカマイマイの最大の大きさです。
レプリカを作るために、私はまず山の中を歩き回って本物を探しました。やっと見つけて三匹だけ持ち帰り、家で飼育することにしました。一緒に暮らしてみて思ったことは、最初の一週間くらいはものすご~く気持ち悪いんですよ、大きくてヌメッとしているから・・・。でもそれを通り越すと、不思議なことに情が湧いてしまって・・・。「マイマイちゃん!」なんて、名前まで付けてしまいました。
多少の違いはあっても、大なり小なりそういう事情や背景を持って造形物を一つ一つ製作しています。だから自然に自分の想いがこもった造形物に仕上がっていきます。
こういう少し変わった仕事もたまには入ってくるから、やっていてとても楽しいのでしょうね。
▼仕事上、何か気を付けられていることはありますか?
造形物を作る時には、その前に必ず小さい模型を作ります。理由は、お客さんからの受注時に本物の写真や図面も一緒にもらうのですが、渡されたものを基に完成品を作ったとしても、お客さんから「そんなイメージではない・・・。」と言われてしまうこともあるからです。
だからそうならないためにもまずは模型を作って、お客さんにこのイメージで完成品を製作しても良いかどうかの確認を取るようにしています。
それともう一つ、よくあるパターンで広告代理店さんから仕事をいただくような場合には、その大元の発注者さんと広告代理店さんが打ち合わせする時、「その打ち合わせの席には、必ず私も同伴させて下さい。」と言います。そうやって発注者さんとの意思疎通を直接図る努力をしないと、仕事がうまくいかないのです。全員が一体となって同じイメージを共有しないと、良い仕事は出来ませんから。
「ここにあるものと同じものを作ってほしい。」という依頼なら、これは簡単な部類に入る仕事なのです。作らないといけないもののイメージが全員の頭の中で明確になっていますからね。
しかし、例えばこの世に存在しないようなもの、例えばキジムナー(沖縄で古くから伝わる精霊・妖精)などは伝説上の生き物ですから、想像で作らざるを得ません。そうなると各人でキジムナーの持っているイメージは違いますから、私達のほうで予め作った模型を見せて「こんなイメージでどうですか?」と訊くわけです。そうすると「髪の毛の部分はもう少しこんな風にしたほうがいいな・・・。」など、いろいろな意見が出てきて、全員のイメージが少しずつ統一されてくるのです。
模型もなしに口だけでイメージを説明しようとしても、それだと細かい部分までは伝わりませんから、このようにして作ったものを見せてしまうのです。
▼好きな言葉を教えて下さい
北九州のほうに、私が尊敬しているある社長さんがいまして、彼がよく口にしている『転がる石にはコケが生えない』という言葉が好きです。
要するに、いつも探究心を持って物事に取り組みなさい、という意味ですね。止まってしまったらそれ以上成長しなくなるし、技術も伸びなくなってしまう。それどころかコケがついてしまっては使いものにさえならなくなってしまう・・・。
これは、私が身を置いているこの世界では、とても重要な意味を持つ言葉だと思います。それにシンプルに言い表していてとても良いですね。おまけに難しいことを言っているわけではなく、しかし奥深さがあります。
▼これからの抱負をお聞かせ下さい
今年2009年の3月20日に私達の業界では、2年に1度の大きな大会が開かれます。北海道から沖縄までの各地の代表が揃って、看板デザインの技能グランプリを行うのです。
私はその大会の沖縄代表として出場します。全国の強豪達が集まって、その中で自分の腕試しができるのですから、こんなに有意義で楽しいことはありません。で、今はそのために、ここで技能のレベルアップを図る練習を積んでいます。ぜひ、頑張ってきます。
それと私は今年52になるので、そろそろ後継者を育てる時期に入ったのかなとも思っています。現在は息子も一緒に仕事をやっていますから、会社のこと、技術のこと、その他いろいろなことを継いでもらうためにその準備にも入っています。
でもそれで終わりではなく、さらに進化するために、自分自身の腕ももっともっと磨いていきたいと思っています。この仕事に終わりはありませんから・・・。
徳平代表取締役からお話を伺った後、私達は、沖縄ではここにしかないという優れもののマシンを見せていただくことができました。
そのマシンの名は『クレイツール』。コンピューターの画面上には、3Dのバーチャル粘土の塊が映し出されています。手元のコントローラーを操ることで(ナイフにして削ったり、ヘラにして形を整えたり)、画面の中のバーチャル粘土が様々な形に変化していきます。
驚いたことに、画面を見ながら粘土をいじくっていると、粘土の感触がコントローラーを通して自分の指にもリアルに伝わってきました。そしてこのマシン良いところは、最初に一つ造形物が出来れば、まったく同じものがあとから何個でも作れる点。『最先端技術』を体験できて、私達は感激してしまいました。
しかし徳平代表取締役いわく、「我々の世界では、このようなデジタル技術を扱う一方、アナログ(手描きのデッサン)もできないと務まらないのです。だから若い世代には、そのことを常々話しています。」とのことでした。
デジタル&アナログの驚くべき技術を持っているオブジェさんの今後の活躍に注目です。



有限会社 オブジェ














