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週刊元気企業 【佐喜眞美術館】佐喜眞美術館 - 何があっても、戦争は絶対にしてはいけない!
今回は佐喜眞美術館の佐喜眞道夫館長にお話を伺いました。 佐喜眞美術館さんの持っている特徴やテーマを教えて下さい
沖縄が抱えている過去から現在に至る様々な問題は、政治的にも経済的にも解決が非常に難しいものばかりなのです。しかし、アートはイメージの世界ですから人間本来のイメージに変えていくことが可能なのです。 そして、それを受け取る側(鑑賞する人)の感性や思考がしっかりしていれば、想像力をいくらでも働かせていくことは可能になります。 美術作品は本来命を深々と感ずるためのものです。中でも当美術館の大きなテーマは、太平洋戦争末期の『沖縄戦の真実』を絵画を通して伝えていくことにあります。何が悲惨かと言えば、『沖縄戦』はアメリカ軍の側から言えば、「アメリカの爆撃機を安全に飛ばすために、その障害となる日本兵を最後の一人まで掃討する。」日本軍の側から言えば、「日本兵の最後の一人までアメリカと戦って死ね」という戦争です。その状況の中を、沖縄の人々はアメリカ軍と日本軍の間で板挟みになりながら逃げ惑っていたので、それはもう想像を絶する地獄の世界だった、という点です。 美術館を建てられた経緯を聞かせて下さい
両親が熊本へ疎開しましたので、私はそこで生まれ育ちました。熊本は『水の都』と呼んでも良いくらい水が豊富で、しかも自然の豊かな場所なのです。その熊本で、親から故郷沖縄がどれほどすばらしい所であるかをたくさん聞いていた私は、沖縄に大きな憧れを抱いておりました。 その後、沖縄へ初めて“帰ってきた”時、辺りを見回してみると風景はすべてが吹き飛ばされてサンゴの岩だらけの、ただ真っ白だったのです。そこをアメリカの軍用車が砂埃を巻き上げて走っていきますから、人々は逃げるようにして道路を渡っておりました。『想像していた沖縄』とのあまりの違いに、私はショックを隠しきれませんでした。 そんな沖縄の光景を目の当たりにしてしまった私は、つくづくここに樹を植えてみたいと思うようになりました。そしてその想いは、年と共に心の『緑陰』を創りたいという気持ちへ変わっていきました。 沖縄に、皆が心を落ち着け、静かに『もの想う場』を創りたい・・・。 この仕事をしていて良かったことと大変なことを聞かせて下さい 一番良かったことは、心の『緑陰』としての『もの想う場』、美術館を造ることが出来たことですね。そしてその中には、コレクションの質にもこだわりや沖縄という場所を考えての建築や庭も沖縄に徹底してこだわってつくりましたので、全国や海外からのお客様に沖縄の『本質』や『志』が伝わっていくのが嬉しいです。『アート』は言葉とは違いますから、容易に国境や世代を越えて伝えていくことが可能なのです。そういう意味でやりがいと生きがいを持って取り組んでいます。
大変なことは、実際の運営に関することですね。今年で14年目になりますが、これだけの施設を維持し続けていくのは、本当に容易なことではありません。維持していくために毎日清掃から始まり、様々な仕事をしゃかりきになってこつこつと行っております。 好きな言葉を教えて下さい
自分が、この美術館で普段行っていることに基づいて言うと、『一隅を照らす』という言葉ですね。これは伝教大師・最澄の言葉で、『現在、自分が置かれている場所や立場で、最善を尽くして照らすことのできる人、他者を光らせることができる人、さらには社会や世の中を明るくすることのできる人』という意味です。 私自身もそのようなつもりで、「自分のやれる仕事をきちんとやっていこう」と考えています。そのようにして沖縄の持っている真実の姿や問題を、美術館に来て下さった方々にお伝えし、考えていただく機会を作ってもらう。 この作業を10年20年とコツコツ続けていくことが、やがて世の中全体の豊かさになっていくだろう、という夢を持ちながら取り組んでいます。 これからの抱負とメッセージをお願いします 繰り返しになりますが、『沖縄戦』という事実をしっかり捉えて、『このようなことは二度と繰り返してはいけない』という想いを、皆さん一人一人の心の中に深く刻み込んでいってほしいです。そうすれば、その時点で戦争を止めることが可能になるわけですから。そして佐喜眞美術館が、それを確認できる場所になれたら良いなと思いますね。 特に現代は核の時代ですから、戦争を容認してしまったら人間は滅んでしまいます。このことを全人類で考えていかないと人間に未来はありません。そのことを考えるために当美術館はある。ですから何回でも足を運んでいただいてそれを確認してほしいですね。 ただ、ここまで言ってしまうと敷居が高いというイメージができてしまうので、まずは気軽に遊びに来て下さい。例えば、映画館へ映画を観に行くような感覚と同じで良いのです。違う点は、映画館だとスクリーンの方から物語を語りかけてきてくれますが、美術館では絵を観た人が頭の中で物語を作り出してくのです。例えば、昔、お祖母ちゃんから聴いたお話を思い出したり、あるいはテレビで見た内容を思い出したりしながら。そして、人によっては一枚の絵の前で立ち止まって、何時間も動かなくなるのです。
同じ絵を観ても、観るたびにその感じ方は変わってきます。例えば、中学や高校の時に観た感じ方と、社会人になった時の感じ方、あるいは結婚して子供と一緒に観に来た時などでは、大きく変わることでしょう。そんな風にしてご覧になっていただければ、あなたの人生はきっと豊かになることでしょう。ぜひとも、お待ちしております。
【取材後記】 佐喜眞美術館の中でもメインとなる『沖縄戦の図(丸木位里・俊の作)』を鑑賞して参りました。第三展示室の奥の壁いっぱいに常設展示されているこの絵は、大きさが縦400センチ・横850センチの超大画面で、観る者をとことん圧倒します。 そしてそこに描かれているものは、一言で言えばこの世の『地獄』。人間の残酷さ、理不尽さ、凶暴さ、そして悲しみや苦しみなど、ありとあらゆるマイナスの感情が「これでもか!」というぐらい凝縮されて描かれています。私はこの絵を観ているうちに、悲鳴や泣き声・うめき声などが頭の奥からたくさん聞こえてきたような気がして、少し気分が悪くなってしまいました。ここには、精神も肉体も破壊されてしまった人形のような人々がたくさん描かれています。本当にショックです。 『戦争』という、人間の犯した罪の中でも最悪の行為を悔い改めるためには、少なくとも一度は(可能であれば何度でも)観ておかなければならない作品だと思いました。
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