お給料日の夜、贅沢して美味しいものを食べたい衝動にかられた私。
以前からチェックしていた那覇のフランス料理店を即、予約したのです。
電話にて、思い切ってコース料理をオーダーいたしました。

ところが…気づいたら、誰にも前もって声をかけていなかったのです。
一緒に食べる相手がいない。
笑ってはみたものの、だんだん怖くなってきた。
「今から誘ったら、〇〇ちゃんは来るか?」
「お酒飲むとしたら、車でなくバスで来させるのか? いや、代行で帰させるか?」
だめだ。今から支度してきても予約時間に間に合わない!
私があわてて手にしたのは、『携帯電話』ではなく『文庫本』!
サマンサ、美味しいと評判のフランス料理店で1人、コース料理を食べることを決心しました!
小さくて雰囲気のある店内に入ると、大人のカップルが2組…。
スタッフの方も感じの良い対応…。
あまりの緊張感に毛穴がキュッと閉じる。
1人の不安をかき消すために、
ナプキンを膝にかけるなり、バサバサーっと文庫本を開く。
「あんた、見られてるよー」と、脳内サマンサが言ってる。
つがれたお水を一気飲みしたので
スタッフさんがあわてて『わんこそばのように』、2杯目をつぎ足す。
「蛸のゼリー閉じ」や、「カモ肉ソテー」など、美味しそうな料理は次々来るものの、
そのたびに文庫本を置いては食べ、食べては読むマネをして次の料理を待つなど、
小道具使いで忙しいやら、料理は美味しいやらで、交感・副交感神経フル稼働!
1人はキツイかもしれないと、次第に悟り始める。
頭の中に思い浮かぶ言葉が、
「なんか・へんなー」だったのが、「でーじ・あふぁー」へと、
「でーじ・あふぁー」だったのが、「しに・ばひー」へと、
コースの流れに合わせ、一気にバージョンアップ!
ああ、しに・ばひー! 五木寛之の文庫本持ってきたのに、
ドキドキしすぎて『踊る大捜査線』、読んでるみたいーー。
スタッフにも、カップルにも、緊張してるって思われたくなーーい!
SOS! SOS!
那覇大橋を、封鎖せよ!
この時間ごと、封鎖せよ~!
「すいません、お時間かかってしまいました。待たれたでしょう?」
勝手に疲れてるサマンサに、
女性のシェフの方が、デザートを出すときに厨房から声をかけてくれた…。
「いえ…、なんていうか、初めて1人でレストランに来たので、
間がもたなくって…へんな~してました。
あ、この器、かわいいですね…」
「オーナーがこだわっているんですよ。
なんかクラゲを逆さにしたようなみたいな不思議な形ですよねー」
確か、この店のシェフは彼女1人だったはずだ。
真剣勝負が繰り広げられる厨房の中から、彼女は1人のサマンサを気遣ってくれたのかなぁ…。
そのプロ意識と、さりげないヒトコトで、
くらげを逆さにしたようなキラキラした器の上の、
温かいチョコレート・フォンダンは、優しく甘みを増したのです。
今度も1人で来てみようか
そして、今度は自分から彼女に、“美味しかったです”と挨拶したいな。
by サマンサ



あわてぃ・はーてぃした夜











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